ビンテージマンションを活かし育てる仕組みについて。 

運営100年を目指して現役を続けている奇跡の建物「冷泉荘」に潜入!!

不動産の管理は築年数や構造・間取りや規模によってもいろいろな種類が存在しています。不動産を管理している側から見ても、新しい建物の方が、修繕などに対応する時間も少なくて済み、こちらが良いという考えもあれば、いや古い建物にはその経年変化による味わいが魅力で、多少の修繕などには寛容であれ・・という考えもまた存在します。いずれにしても新しい建物も築年数が経過した建物にも管理は必要になる訳であります。新しい建物は、九州でも最大の人口を誇る福岡市には多く存在していますので、よく目にいたしますが、築年数が経過していても現役として異才を放つ優秀な建物もまた、多く存在しています。今回はそんな選りすぐりの中から博多区の祇園祭のひとつで700年以上の伝統が残る「博多祇園山笠」でも賑わう冷泉町にある「リノベーションミュージアム冷泉荘」に潜入するすることに成功しました!その時の模様を対談形式でお届けいたします。


株式会社スペースRデザインが進める新たなビル活用のスタート!



昭和の時代を映すその外観はどこか懐かしく、歴史ある街になじんでいました。取材した日はちょうど紅葉の時期に重なっていたため、近くの公園の草木も鮮やかなオレンジ色に色づいていました。朝の気持ちよい空気を感じていましたが、建物の中では、入居されている若きクリエーターやアーテイストたちが既に活動を始めていました。

冷泉荘は、株式会社スペースRデザインさんが企画・運営されている建物で、クリエーターやアーティスト、また起業家の方たちがチャレンジできる場として提供されているプロジェクトです。当初は2006年から2009年までの期間で始まりましたが、築年数が経過した建物の新たな活用方法としても徐々に注目を集めることになりました。その後、建物を診断調査した結果、耐震補強を施すことで継続して利用できることが判明したため、新たに情報発信やコミュニティの場としての魅力を付加し現在のリノベーション・ミュージアム・REISENSOUとして成長を遂げてきたのです。2012年には「福岡市都市景観賞」を受賞するに至っています。

ここからは登場人物の対談形式で行います。


(インタビュアー)
まず最初に現在の冷泉荘について教えてください。

(杉山さん)
冷泉荘は築100年を目指そうというプロジェクトで運営を行っています。外壁も塗装して、補強も既に完了しています。あえて古さを残す塗装を施しているので、何も手を加えていないの?と言われることもありますが、実は分からないところにしっかり費用をかけて運営を行っています。

(インタビュアー)
ホワイトならホワイトでキレイに塗装してしまった方が良い外壁でもあえて経年変化の特徴を残しながら印象を変化させない工夫をしているということですね?

(徳永さん)
一番分かりやすいのは、長崎県の軍艦島をそのまま残そうという取り組みがあって、”軍艦島の保存”の為に使用されたメーカーの塗料を使用して外壁などは塗装しています。ここ、何もやってないな!古い!と言われてしまいがちですが(笑)

(インタビュアー)
でも実は塗っているんだ!となる訳ですね。確かに外壁に取り付けてある鉄部の錆もあえて残してありましたね。雰囲気は確かに味わいを残していると感じました。室内の内装などはどうしているんですか?

(徳永さん)
冷泉荘は全てテナントさんに自由に使って頂いています。躯体を触るなどをしなければ基本的に自由です。退去時の原状回復も要求しないので、次に利用される方がさらに手を加えるなり、とにかく好きにご利用いただいています。建物自体の魅力を理解していただき空間自体を貸しているというイメージです。

(インタビュアー)
築年数が経過した建物となると想像してしまうのが、メンテナンスのコストになりますが、頻度や費用はどうですか?

(杉山さん)
そこに沢山の費用をかけています。冷泉荘に関しては、普通はかかる内装費用を全てテナントさんにしていただいているので、回収した賃料を管理人の常駐費用とメンテナンス費にあてることが出来ています。

(インタビュアー)
事務所・店舗として運営しているからこそですね。築年数が経過した建物を密に管理するに当たって、一番大変なことは何ですか?築年数が新しい建物を管理する事には慣れているPM会社は多いと思うのですが、冷泉荘のような味わいのある建物を維持管理されているのは率直に凄いことだと思っています。

(杉山さん)
管理人として関らせて頂くにあたって仕事とプライベートを分けていないので、プライベートの事をしているときは冷泉荘の仕事が出来ないという所は不都合に感じるところはあります。(笑)

管理の仕事としてサイトの運営も編集も自分で行っています。色んな入居者さんがいらっしゃるので、それぞれテナントさん毎に情報配信を行ってはいるのですが、全体を私が取りまとめて配信していく事で、冷泉荘というブランドにしています。それをしていると、建物の管理をしている株式会社スペースRデザイン自体の広告にもなりますので、建物自体を広告して(広めて)いく事も私の仕事です。


独自の情報配信手法により企業と建物のブランディング効果を生み出していた。

(徳永さん)
杉山さんには、日常の清掃も小まめにして貰っていますが、多くの方の視察の対応もして頂いています。週に1~2回は案内依頼が入ります。昨日も北海道からお見えになりましたよ。

(杉山さん)
視察を希望されるお客様はメディアに紹介して頂いた情報や不動産関係の口コミで広めていただけるおかげでお問合せを頂いています。それだけで認知されていると感じられるかもしれませんが、建築リノベーション関係の観光地みたいな感じです。(笑)

業界にお勤めの方だけではなく、学んでいる学生の方や教えている学校の先生。あとアート関係の方など本当に多くの方に見学して頂いています。

実際のテナントとの契約形態について。

独自の情報配信やコミュニティを活用し、不動産業界関係者以外にもリノベーションやアート関係で学ぶ学生たちにも注目を集めている冷泉荘。ここからは実際に入居しているテナントとの関係についてさらに踏み込んだ質問をさせて頂きました。

(インタビュアー)
現在、21テナントでお部屋の数は26室(管理事務局、レンタルスペースを含む)と伺っております。リースの金額設定などはどうされていますか?

(徳永さん)
テナントとしてリースを始めた当初は3年の定期借家契約で賃料は20㎡のスペースで35,000円~で、スケルトンとして水回りなどのベースのみを整えて、後は自由に使って頂いていました。冷泉荘はもともと期間限定で運営を行っていたため、将来的には取り壊すかもしれないという話はありました。ただ、当初は調査をする費用もありませんでしたので、3年間限定で定期借家契約を結んだ訳です。

(インタビュアー)
3年経過する前に解約する場合は?

(杉山さん)
解約する場合には別の人を紹介して頂いていました。原則は解約不可です。そうすると3年分の賃料収入は確保できるので、それを使ってメンテナンスや強度(建物がどの程度維持できるのか)の調査を行い、その結果が良好でしたので耐震補強をしながら利用していこうという方針になりました。

賃料関係で言うと、十数年前に35,000円でスタートしてそれから入退去を繰り返していって現在は60,000円~でご契約して頂いております。

(徳永さん)
稼働率はここ2~3年でほとんど100%に近いですよ。

(杉山さん)
シェアオフィスの運営もしているのですが、そこだけは1年契約にして余白を持たせるようにしています。シェアオフィスの運営と聞くと難しそうな印象を持つ方もおられると思いますが、冷泉荘自体が元々全体でシェアをしている感じがあるので、私からしてみると1室の中にそれが凝縮しているだけで、利用者さん同士で何かあれば私に言ってもらうようにしています。実際にトラブルなどがあれば私が基本的には対応しています。

(インタビュアー)
入居審査はどうされているのですか?

(杉山さん)
借りたいという申し出を受付するのが私なので、面談は私が行っています。お尋ねに来られた方とお話する中で人柄を見て、お引き受け出来そうであれば会社に報告しています。お申し出を頂く方は、入居者やイベントに参加した方からの口コミや運営サイトを見られた方々です。まずは募集条件を聞きに来られる方が多いですね。

(徳永さん)
冷泉荘は事業をここでスタートしたいなど、利用者の多くが個人事業主の方ですので、決算書などの書類よりも建物のコンセプトを理解して頂けて、利用者の輪を大切にしていただける方を大切にしているので、その見極めを杉山さんに担ってもらっています。杉山さんがいるから出来ているということも多くあります。

実際のビル内部に潜入開始!独自の運営が生み出す入居者との信頼関係とは。

共用階段など鉄扉などの傷はそのままに、あくまでも建物の今を大切に保存しながら成長と続ける冷泉荘。賃料のアップと高稼働を実現させているその手法がどのようにして内部まで浸透しているのかを実際に入居中のテナント様にもご協力頂き調査しました。




特殊な塗料を使用し、あえて劣化した箇所を保存しながら適切な処置を施していることが確認できます。通常の補修工事よりも確実に手間のかかる作業だが、こうした取り組みが建物のブランド力に影響していることが確認できました。株式会社スペースRデザイン不動産事業部 ディレクターの徳永氏はこう言います。

「弊社にご相談に来られるオーナーさんからうちの建物は古い建物だから、どこに相談しても古い建物だからもうダメだと言われる。という話を伺いますが、古くても良い所は必ずあるので、そこはちゃんと良い所として発信してあげましょう。どうしても修繕などをしないといけない部分は、情報を切り分けて整理をしたうえで検討していきましょう。とご説明をすると、オーナーさんには凄く喜んで頂けます。」

徳永氏が語られることは、確かにその通りだと思います。通常は古い建物はなにもしなければ賃料を下げて、設備を付加してとなりがちです。古い建物に関わらず、悪い部分を挙げろと言われればいくらでも列挙できる人は沢山います。逆に建物の良い所を細かく注目しオーナーさんと共有していくと、パートナーとして信頼して頂きやすくなるはずです。不動産コンサルタントに携わるものとして改めて大切な事を学ばせて頂きました。



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入店されているお店の商品はハンドメイドが多く、どれも個性的。


カフェとオフィススペースの区画割りは絶妙で不動産企画者には一見の価値あり。


若き博多人形師の工房もあります。制作現場は明るくて心地のよい音楽が流れていました。


当時の様子を残したお部屋もあります。博多の街の移ろいをいろんな人が眺めていたんでしょうね。


2017年12月記事-取材協力
九州CPM福岡 登録コンサルタント | 株式会社 スペースRデザイン 徳永CPM
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